ストップ狩り(もしくはストップ刈り)は、指標発表時や週明けなどのタイミングでスプレッドが大きく拡大して、本来のスプレッドであれば損切されないレートであるにもかかわらず損切が発生してしまう現象のことを言います(別の意味のストップ狩りもありますが、本記事では冒頭のストップ狩りについて取り上げます)。
ただの現象なら仕方がないのですが、このようなスプレッドの拡大が「意図的に行っているのでは?(損切を誘発させているのでは?)」と勘ぐってしまうようなタイミングでスプレッド拡大を行うブローカーもあるため、「ストップ(≒逆指値)狩り」という名称が生まれています。
スプレッドの拡大はブローカー側の裁量次第なのでユーザー側からどうにもできませんが、逆指値の設定の仕方次第ではストップ狩り(スプレッドの急拡大による損切り)を完全に回避することは可能です。
この記事ではストップ狩りを防ぐ逆指値指定の方法と、それが可能な取引ツール(アプリ)について紹介します。
取引ツールについては現在私が把握しているツールを紹介していますが、もし他にもご存知のものがある場合是非ご一報ください。
なぜストップ狩りが起こるのか?
いわゆる「ストップ狩り」という現象が起こる原因について説明するために、まず逆指値注文とスプレッドについておさらいしたいと思います。
逆指値注文について
逆指値注文は、あるポジションが指定のレートまで推移したときに、自動的に損切するための機能です。
約定する際は、ロング(買いポジション)はAsk、ショート(売りポジション)はBidのレートで約定します。一方、決済のときはロングの場合はBidが、ショートの場合はAskのレートで決済することになります。
- ロング:Askで約定してBidで決済する
- ショート:Bidで約定してAskで決済する
この時の約定値と決済値(AskとBid)の価格差がスプレッドです。お使いのブローカーが提示しているスプレッド分の開きがあります。
スプレッドの拡がり方
基本的にスプレッドの拡大は、AskとBidが中心レートから均等に拡がります。例えば中心値が100.10のときにスプレッドが30pipsに拡大すると、Askは100.25、Bidは99.95という具合です(下図)。
そのためスプレッドが拡大すると、ロング・ショートどちらのポジションに対してもストップ狩りの危機にさらされることになります(下図では危機どころか狩られています):
「ストップ狩り」現象を防ぐ方法論
ストップ狩りを防ぐための方法論は大きく2つあります。
方法1:逆指値を入れない
ストップ狩りを防ぐ最強の方法は、逆指値を入れないことです。
逆指値を入れるからストップ狩りを食らう……ならば、逆指値を入れなければいいじゃないかという発送です。
しかし、この方法は危険なため、推奨できません。
まず1つ目の問題は、(ストップ狩りと関係なく)損切するレートに達したときに、手動でポジションが切れないといけない(切らないといけない)という問題があります。
100%、絶対に損切できると言い切れる人なら構いません。しかし、実際損失を抱えたポジションを手動で切るのは抵抗があるかと思います。
「いや、もしかしたら上がるかも……ほら、ちょうど反発した」と目先の情報にとらわれて損切を行わなかったとき、トレードプランは一気に狂い、いずれ遅かれ早かれ資産を一気に失うような塩漬けポジションを構築することになります。
そして2つ目の問題は、マーケットから離れているときに急落・急騰が起きたときに対応できないという問題です。
仕事中、睡眠中……など、長時間マーケットをチェックできない時に想定の逆方向にレートが動いても、誰も損切をしてくれません。損切が執行されるとしたら強制ロスカットのタイミングになります。
取引ツールを起動した直後、理解不能な画面表示にどうにも立ち行かなくなる日がいずれくるでしょう。
よって、逆指値注文を入れないという方法を推奨できるのは、以下の条件を満たす人のみとなります:
- 本来損切する予定だったレートに達したら手動で100%損切できる
- 土日以外の24時間、常時チャートに張り付いていられる(≒120時間不眠)
- 必要証拠金の何十倍もの莫大な資産を預金できる(ストップ狩りに遭うリスクをゼロにするため)
方法2:逆指値注文の条件を変える
ストップ狩りは、スプレッドの急激な拡大によって発生します。スプレッド拡大によってロングはBid、ショートはAskのレートが逆指値レートを大きく超えてしまうからです。
……ならば、逆指値執行の基準値がロングはAsk、ショートはBidなら、スプレッドがどれだけ拡大しようが……仮に1500pipsになってもストップ狩りに合わないのではないか?
(参考資料)かの有名な某ブローカーによるスプレッド1500pips超え達成時の画像(Bidレート)。例えこんなことがあっても損切りにはならない方法が本手法
という考えです。要は、逆指値の条件を変えて注文するという方法です。
もし、ロングをAskのレート基準で損切りするように手配できた場合、スプレッドが拡がれば拡がるほど損切は執行されなくなります。
ショートに関しても同様です。
この方法の問題の1つは、近年最も主流な取引ツールと言っても過言ではないMT4で対応していないという点です。
MT4は逆指値注文を指定すると、無条件でロングはBid、ショートはAskを基準値として設定がなされます。
逆指値注文の基準を変えられるツール一覧
実際、上記方法2のような逆指値注文の基準(Ask基準にするかBid基準にするか)を指定できるツールは存在しています。
当サイトが現時点で把握しているツールを3つ紹介します。
LION FX(ヒロセ通商)
LION FX取引ツール画面(カスタム済み)
LION FXはヒロセ通商株式会社が提供する取引ツールです。
ロングポジションのAsk基準の逆指値指定は「ASK判定売逆指値注文」、ショートポジションのBid基準での逆指値注文は「BID判定買逆指値注文」という名称がつけられています。
※ヒロセ通商公式サイトより引用
LION FX使用のユーザーならご存知かと思いますが、LION FXは有事の際のスプレッド拡大幅が他ブローカーと比較して相対的に大きく(特にポンド系通貨は顕著)、トレーダーからよく「ストップ狩りを喰らった」と言われている印象がありました。
「ASK判定売逆指値注文」、「BID判定買逆指値注文」は2017年12月から利用できるようになっています。ヒロセ通商社サイドとしても「意図的なスプレッド拡大、ストップ狩りは行ってない(スプレッド拡大はあくまでマーケットの値動きによる仕方のない現象)」とアピールしたいのではと考えます。
どちらにしても、このような注文方法が使えるという点において、信頼のおけるFX口座の1つといえます。
またヒロセ通商は、有事の際以外(通常時)のスプレッド幅がどの通貨ペアも非常に狭いという特長があります(特にポンド円を除くポンド系通貨が異常に狭い)。
スキャルピング寄りのトレードをしたい方にオススメできるブローカーとなっています。
Matrix Trader(JFX)
Matrix Trader 取引ツール画面(初期設定)
Matrix TraderはJFX株式会社が提供する取引ツールです。
全体的なツールの構造はヒロセ通商のLION FXと変わりません。両社とも小林芳彦氏が関連しており、同系列のFXブローカーという印象です。
逆指値注文名称もヒロセ通商と一緒です(BID判定買逆指値、ASK判定売逆指値注文)。
通常時スプレッドや有事の際のスプレッドもヒロセ通商とほぼ一緒です。そのため、口座開設はどちらか1つだけで問題ないと考えます。
唯一違いを挙げるとすると……毎月行われている豪華プレゼントのキャンペーン内容が異なることくらいでしょうか。
ヒロセ通商もJFXも取引量に応じて様々なプレゼントが催されており、実質キャッシュバック的なメリットがあります。
なので「先月はヒロセだったけど……今月はJFXでトレードしよう」と、プレゼント内容に応じて取引先ブローカーを変えたいと言う方は両方開設するのも悪くないですね。(ちなみに私は両方開設済みです^^;)
JForex(デューカスコピー・ジャパン)
JForex 取引ツール画面(カスタム済み)
JForexはデューカスコピー・ジャパン株式会社が提供する取引ツールです。
LION FXのように逆指値注文に特別な名称は付いていませんが、逆指値注文の指定の際にAsk基準にするのかBid基準にするのかを指定できます。
また、新規約定条件(指値/逆指値両方)も、同様にAsk基準かBid基準の指定ができるのも特徴の1つです。
比較的有事のスプレッド拡大幅が小さい印象があるデューカスコピー・ジャパンですが、週明け時のスプレッド拡大幅にやや不安があり、ポジションを翌週に持ち越すのにちょっとリスクがありました。
この条件を入れておくことで週明けのストップ狩り的現象から身を防ぐことができるだけでなく(※ただし窓開けは防げない)、ディーラーを一切介さないNDD取引を採用している点(ブローカーが不正できない)から、私はデイトレ・スイングに関してはデューカスコピー・ジャパンをメイン取引口座としています。
まとめ
逆指値注文の執行条件を、ロングならAsk基準、ショートならBid基準に変更することでストップ狩りを防ぐことができます。
本記事ではそれが可能な取引ツール(FX会社)を3ツール紹介しましたが、ストップ狩りが普段から気になっている方でまだ未開設の方は是非開設することをオススメします。
余談:逆指値注文の基準変更によるもう1つの懸念点
逆指値注文の基準を変更することでストップ狩りを確実に防ぐことはできますが、次の問題については把握しておく必要があります。
それは、スプレッド拡大中にレートが大きく変動し逆指値に到達した場合、ストップ狩り以上の損失を被る可能性があるという問題です。
逆指値注文の執行基準を変更できるといっても、実際に決済の基準となるレートはロングならBid値、ショートならAsk値となります。
※ヒロセ通商公式サイトより引用
逆指値注文の執行基準を変更することでスプレッドが拡大した直後の損切は防げますが、その後のレートの急変によってさらなるダメージを受ける可能性がある……という点を理解した上で逆指値を指定する必要があります。
100%ストップ狩りが発生しないブローカーがある(条件あり)
ストップ狩りはトレーダーのイメージを悪化させる……ならばスプレッドを100%固定にしよう……
そう思ったかどうかは定かではないですが、SBI FXトレードはスプレッドを100%固定にしています。
SBI FXトレード ツール画面(初期テンプレ)
ただし条件があり、スプレッドが100%固定となる通貨量は、1通貨ペアあたり1000通貨量までの取引と決まっています。
同じ通貨ペアを一時的に1001通貨量以上持つとスプレッドの条件が変わり、有事の際にスプレッドが拡大してしまうため注意が必要です。
1000通貨量までスプレッドが絶対に変動しないという条件に加え、1通貨量からトレード可能というスペックを持っているため、私はSBI FXトレードは唯一初心者にもオススメできるFX口座だと思っています。
Forex Testerなどで検証を行ったあと、実際にトレードを行う際の最終テスト場として使うなど、使いみちは大いにあると考えています。
スキャルは取引回数が多いから、取引ごとに手数料がかかるデューカスコピーはちょっと……という方はSBI FXトレードかヒロセ通商(JFX)をオススメします。
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