「バーブワイヤー」はプライスアクショントレード入門の第5章の項として突然登場しますが、冒頭において「この項は本書のなかでも最も重要な情報が書いてあるため、注意深く読んで欲しい」(p.223)という一文から始まることからもわかるように、非常に重要な内容です。
お読みになった方なら内容を承知していると思いますが、トレーディングレンジにおいてなぜブレイクがダマシになるのかが説明されており、私自身は「なぜそうだとわかったのか…」と驚嘆した項でした。
本記事では、そんなバーブワイヤーの基本パターンについてまとめています。本記事は彼が説明していることの一部でしかないため、本質を学びたい場合は書籍を手に取ってご自身で読み解いて頂ければと思います。
「バーブワイヤー」基本情報
「バーブワイヤー」は、ブルックス本(プライスアクショントレード入門)にて登場する彼独自の為替用語です。
その意味は概ね以下のとおりです(「プライスアクショントレード入門」p.575より引用):
- 3本以上の足からなるトレーディングレンジ
- 足が大きく重なっている
- 1本以上の同時線(=十字足)がある
バーブワイヤーの出現機会
ブルックス本では特にEミニの5分足について取り扱っていますが、バーブワイヤーは通貨ペアや時間足を問わず出現します。
外国為替においても、1日に数回は出現する傾向があり、その度にブル・ベアの仕掛けの応酬が繰り返されています。
バーブワイヤーの英日訳
「バーブワイヤー」という言葉はあまり聞き慣れない(?)言葉ですが、「有刺鉄線」を意味します。
本では”Barb Wire”とカッコ書きで記載されていますが、有刺鉄線は”barbed wire“とするのが基本のようです。
「3本以上の足が重なっていてかつ十字足がある」形状が、有刺鉄線(下図)と似ていることから名付けられたものと推察します。
Googleで「barbed wire」と入力して画像検索した結果
バーブワイヤーの基本的パターンとブル・ベア双方の行動心理
本記事では上画像のようなバーブワイヤーのパターンにおける値動きと、ブルベアの行動について考察したいと思います。
以下の内容は、ブルックス本を読んだ上での筆者の私見であることをご留意ください。
最初の3本:バーブワイヤーの形成
バーブワイヤーでは、最低でも3本以上からなるトレーディングレンジで、かつ最低1本は十字足が含まれています。
上図はその典型例として設定しました。「最低1本」どころか3本とも十字足で方向感がなく、ブル・ベア双方が仕掛けあっていることが伺えます。
わずかではありますが1本目より2本目、2本目より3本目のほうが足のサイズが短くなっており、レジスタンスライン、サポートラインの両方が意識されていることが分かります。
バーブワイヤーにおけるブル・ベアの行動
大方ブル派は買い、ベア派は売っています。しかし、徐々に様子見のトレーダーが増えていき、その結果値動きが弱まり足が短くなっていきます。
ブル派
ベア派
ブル派
ベア派
足1:ブレイクからダマシの展開
レジスタンスラインへの到達
足1は最終的には上ヒゲの長い陰線で引けていますが、引けまでの過程で少なくとも1回は意識されてそうなレジスタンスラインをブレイクしています。
上図はちょうどレジスタンスラインに差し掛かった場面です。
ブル派の買いがベア派の売りを上回っていることが伺えます。
レジスタンスラインのブレイク
上図では明確にレジスタンスラインをブレイクしています。
完全にブル派がこのトレーディングレンジの相場を制したかのように見えますが、ここからが問題です。
ブレイクでエントリーするブル派、利確するブル派
ブレイクと同時に仕掛けるブル派がいる反面、バーブワイヤーの相場では「ここが天井」と見るブル派も一部います。
その多くは足1の前から仕掛けており、レジスタンスラインに到達した時点で一定の含み益を抱えており、レジスタンスライン到達を機に利確(売り戻し)を始めます。
ブル派
ブル派
ブル派の中で足並みが揃っておらず、結果的に上昇への勢いは限定的となります。
レジスタンスライン到達を機に売る逆張りのベア派
さて、ベア派はブレイクとともに損切り(買い戻し)を行うトレーダーもいますが、それと同時にレジスタンスラインを天井と見て売り始めるベア派も少なからずいます。
彼らはレートが下落し、再びトレーディングレンジの中に入ることを期待します。そのため、ブレイクを機に積極的に売り続けます。
ベア派
ベア派
ブレイクの失敗:ティーズブレイク
以上のブル・ベア双方の動きを総合すると、ブレイクを機に下落方向の力が勝ることが多い…というのがバーブワイヤー特有のブレイク後の値動きです。
上昇への勢いはブレイクを機に弱まり、やがてレジスタンスラインを再び下抜けします(ティーズブレイク)。
ブレイクがティーズブレイクとなると俄然ベア派の売りは強まり、ブル派の仕掛けは収まります。
ブル派
ベア派
※もちろん、これら一連の動きは絶対ではありません。売るベア派が少ない、利確するブル派が少ないなどの理由でティーズブレイクとならずこのまま上昇する展開も、探せば当然見つかるでしょう。
足1が陰線で引ける:含み益を抱えるベア派と含み損を抱えたブル派
結局始値も下回り陰線で引けました。
この時点でいえることは、足1で仕掛けたブル派のうち、まだポジションを保有しているトレーダーは全員含み損を抱えており、足1で仕掛けたベア派はほぼ全員含み益を抱えているということです。
ブル派:逆指値はどこに
含み損を抱えたブル派は、相場が一定のところまで下がると当然損切りを行う必要があります。
損切りをする一番多いと考えられるポイントは、トレーディングレンジの下弦…サポートラインのブレイクポイントとなります。
ブル派はサポートラインに到達するまでに再び上へブレイクすることを期待して、含み損を抱え続けます。中には更に買い続けるブル派もいるかもしれません。
ベア派:利確はまだ早い
一方、足1で仕掛けたベア派の利確ポイントについて考えると、やはり最初に多くいると考えられるのがサポートラインです。
足1で仕掛けておいて、足1の引けで利食うにはあまりにもリスクに対するリワードが小さすぎます。
そのため、このまま含み益が拡大することを期待し、ブル派同様ポジションを持ち続けます。
足2:上抜け失敗から始まった下抜け(サポートラインのブレイク)
上図では足2がサポートラインに到達した場面です。
足並み揃わないブル派
積極的なブル派の一部は、再びトレーディングレンジの中を推移することを期待して買うトレーダーもいます。
しかし、それと同時に、足1で仕掛けたブル派の損切り(=売り戻し)ゾーンでもあります。
ブル派の内部だけでもこのように方向性が異なることから、上昇への期待は一層薄まります。
ブル派
ブル派
保有し続けるベア派と仕掛けるベア派
サポートラインに到達したことを理由に、満足して利確(買い戻し)をするベア派も多少はいます。
しかし、サポートライン到達→ブレイクを機に仕掛けるベア派のほうが多くいると考えます。
なぜなら、足1でのブレイク失敗で含み損を抱えたブル派がサポートラインブレイクとともに売り戻しを行うことが予想でき、その結果ダブルの圧力が発生することが期待できる場面だからです。
そのため、積極的なベア派だけでなく、この機会を待っていたと言わんばかりに慎重なベア派も仕掛ける場面となります。
ベア派
ベア派
ベア派
ダブルの圧力を得た足2
この時点でのブルとベアの均衡は破れています。
上昇の材料は以下の2点です:
- 買うブル派(少数)
- 足1で仕掛けたポジションを買い戻すベア派(少数)
一方、下落の材料は以下の通りです:
- 足1で仕掛けたポジションを売り戻すブル派(多数)
- 足1までに仕掛けたポジションを売り戻すブル派(多数)
- 売るベア派(多数)
そして、下落方向にダブルの圧力を得た相場はサポートラインをブレイクし、弱気の陰線で引けます(下図)。
足3:仕掛けるベア派、逃げるブル派
足3の寄り付きと同時に、より一層慎重だったベア派も加勢し、ベア派の方針は下で一致します。
一方ブル派は、足2のサポートラインブレイクを成功と判断し買いを控え、また、まだポジションを抱え続けていた一部のブル派も諦めて売り戻し(損切り)を行うことで下落の燃料となります。
また、足1ではブル派だったトレーダーの一部がベア派に寝返って、ドテン売りを仕掛けることも考えられます。
(現ベア派)
この展開はベア派が売るのを止め、利確する(買い戻す)流れが強まるまで続きます。
まとめ:バーブワイヤーの相場における基本姿勢
ブルックス本のどこかに書かれていると思いますが、バーブワイヤーでは最初のブレイクはダマシに終わり、再びトレーディングレンジ内で競り合うか、反対方向へのブレイクの足掛かりとして機能することが多いとされています。
その基本的なパターンにおけるブル・ベアの大まかな動きを紐解くと本記事のようなパターンであると考えられます。
ブレイクがダマシとなり反対方向への圧力が加わることを理解しておけば、ブレイクアウトが失敗に終わることも納得でき、ブレイクの失敗に対して躊躇なく損切りを行えると思います。
ただし、基本は基本でしかなく、結局その時のブル派・ベア派の取引量の多さで結果は大きく変化します。
ティーズブレイクにならずにそのままブレイクするパターン、ダマシのブレイクがダマシになるパターン(ダマシのダマシ)におけるブル・ベアの動きは応用編にてまとめたいと思います。
関連記事
バーブワイヤー応用編を作成しました。ダマシの動きがダマシになる展開について考察しています:
コメント